キミは嘘つき蝶々
わけがわからない。

好きかどうかはっきりしろとしつこく詰め寄った挙句、今度は近づくな?

「それこそ、あんたには関係ないだろ?」

ポケットに手を入れムッとしながら夏を睨む。

大体、森口に近づくのに夏の承諾なんて必要ない。

俺様がどうしようと、俺様の勝手だ。

それを。妖怪ババアと言い、このヤクザと言い。

「なんで外野に余計な口出しされなきゃいけないわけ?」

「カンナちゃんは婚約したんです」

「は?」

ぽかんと口を開け、首を傾ける。

「婚約?」

言葉は明確に聞こえたのに、意味を解することができない。

森口が?

え?

地味でメガネで

たぶん、男と付き合ったこともない。

彼氏いない歴17年の未経験まるだしな森口が?

「は……なにそれ。
いきなり婚約って。
そんな物好きな男がいるわけな……」

「蝶の道行の公演が終わったら、正式に贔屓筋へお披露目することになってます」

「………」

ダメだ。

完全にパニックを起こして、頭が働かない。












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