キミは嘘つき蝶々
なんか空振りくらった気分だけど


まあ、よく考えたら、セーフだったんじゃないか?

この顔よし、スタイルよしの片桐ヒロ様が、森口のみたいなぱっとしない奴に片思いしてるなんて

バレでもしたら、恥ずかしくて学校なんかいけなくなるもんな。


ましてやフラれでもしたら………
馬鹿馬鹿しくて……



立ち直れねーだろ……


俺は歩くスピードを落として、振り返った。


道は緩やかな昇り坂になっていて、小走りに追いかけてくる森口のつむじが遠くに見えた。


ズカズカ歩きすぎたせいか、ずいぶん距離が離れてしまったらしい。

俺は立ち止まり、森口の肩で揺れるミツアミを見つめた。



……―気付くな


まだ、


……―気付くな




呪文のように唱えて、そっと森口の鞄を指先でなぞる。

胸に何かがつかえたように、息苦しくなって

俺は再び彼女に背中を向け、ゆっくりと歩き出した。



いつか


俺を好きになる日まで


絶対に。


気付くな……―。





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