キミは嘘つき蝶々
と、

軽くセンチメンタルな気持ちになりながら、ちんたら歩いてやったにも関わらず、森口の足音は微妙な距離を保ったまま、一向に近づいてこなかった。

イラッと額に青筋を立てながら振り返る。

「………なんでそんなに離れて歩いてんだよ?」

顎を逸らして、高圧的にそう問うと、森口はオロオロと顔を伏せた。

「え、う、と、殿方と歩くときは三歩後を歩けと御祖母様の言い付けなんです」

「3歩じゃねーだろ!
ゆうに15歩は開いてるだろうが!」

「え、でも。
片桐君みたいなナウイ人と並んで歩くのはなんだか緊張しちゃって」

「ナウイとか言うな!
こっちが恥ずかしいわっ!!」

赤くなりながら怒鳴ると、森口は「す、すみません」と頭を下げた。

しかし

こいつの語句は、なぜにこう昭和くさいんだ?

まあ、言葉に限らず、森口の場合、なにもかもが古臭いんだけどさ。



「あの、片桐くん」

森口が恐る恐ると言った感じで顔を上げる。

「なんだよ」

ぶすっとしながら腕を組むと、森口は遠慮がちに背後を指差した。

「あの、浜名さんは置いて帰っていいんですか?
一緒に帰る約束なんじゃ?」

「あいつは未確認生物探してるからいいんだよ」

「未確認生物?」

森口が不思議そうに小首を傾げる。

その仕草がちょっとだけ

まあ、ほんのちょっとだけ可愛くて、

緩みそうになる頬を隠すように、口許に拳を当てて咳ばらいした。
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