キミは嘘つき蝶々
「ま、あれだ。
美佳のことはほっといてやれ。
それより家どっちだよ?
さっさと道案内しろよ」

身体を反転させ、二股に別れた道を顎で指し示す。

森口は小走りで追い付くと、少し距離を開けて俺の隣を歩き出した。

鞄を持ち直すふりをして、そっと横顔を盗み見る。


柔らかそうな白い頬。

小作りだけど、意外に整った鼻梁。

ぷっくりした桜色の唇。

風が吹くたび、微かな甘い香りが鼻腔をくすぐって……




「あの、片桐くん」

俺はハッとして、わざと顔をしかめた。

「な、なんだよ」

どもりながら、答える。

森口は落ち着きなく、制服のベストの裾を引っ張った。

「あの、やっぱり判らなくて」

「何が?」

「私達クラスメイトですけど、ほとんどお話したことないですよね?
どうしていきなり送るなんて言い出したんですか?」

「………」

「……あの、これってもしかして」

「………」
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