キミは嘘つき蝶々
息が触れ合う距離で、ゆっくり目を閉じる。

唇に篭る熱が伝わるくらい近付いて……

「そこまでじゃ!
この、不埒ものがあああああああ!!」

「ゴッ!」

いきなり、しわがれた怒声が響いて、俺は脇腹に飛び蹴りをくらった。

ニメートルほど吹っ飛ばされて、地面に転がる。

「グッ。な、」

鈍い痛みを放つ、脇腹を押さえ、アスファルトにぶつかった衝撃にちかちかする目をしばたいた。

な、なんだ?

顔を歪めながら、霞む目を眇る。

ぼやけた視界の先に、やけに小さいシルエットが滲んだ。

「ふんっ!
学生の分際で往来でサカリおって!」

偉そうに顎を逸らし、腕組みしながら俺を見下ろしているのは

結構年の行った小さな老婆のようだった。

まさか、さっきの蹴りは

このばーさんか?

「御祖母様!」

森口が慌てたようにばーさんに駆け寄っていく。




おいこら。

俺は無視か。
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