キミは嘘つき蝶々
「何めっちゃ動揺してんの?」

不思議そうに美佳が首を傾げる。

俺は引き攣りながらも、髪をかきあげ、ふっとニヒルに口の端をあげてみせた。

「いや。昨日、ヤス達とカラオケでオールだったからさ。
なんだか寝不足でぼーっとしてんだよ。
あーかったりぃー」

言いながら身体を屈め、転がったシャープペンに手を延ばす。

「ま、ヒロが森口見つめるなんて、有り得ないよねー」

頭上から降ってくる、美佳のアホっぽい笑い声にホッとしながら、俺は転がったフデバコの中身を拾い集めた。

そのままの姿勢でこっそり森口を見る。

きっちり揃った細い足首。

ピンと延ばした背筋。

白いうなじ。

視線に気付いたのか、不意に森口が振り返った。


俺は、はっとして顔を伏せた。


…………なんで。

フデバコにシャープペンをしまいながら、顔をしかめる。

どうして

俺は、あんなダサ女から目が離せないんだ?

頬に赤みがさしていくのが判る。

ドキドキ鳴る心臓が信じられなくて、そっと手をあてた。


何だよこれ。

これって、なんだ?
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