キミは嘘つき蝶々
ゆっくり足音を立てないように、彼女に近づく。

緊張からか、軽く足が震えた。

カタンと森口の向かいの椅子を引いて、腰を降ろす。

頬杖をついて、じっと見つめると、本に夢中になっていた森口は、ようやく気づいたように顔を上げた。

「………ひっ」

一瞬にして森口の顔が引きつる。

拒絶するようなその反応に、胸がキリキリ痛んだ。

「ひっ、てなんだよ?化け物みたような顔してんじゃねーよ」

そんな情けない自分を知られたくなくて、威嚇するように顔をしかめ不機嫌な声を出す。

森口はアワアワしながら、手の中の本をお手玉した。

「ももももも申し訳ございません。そそそそそそのようなつもりは一切ございません。平にご容赦いただきたく」

「なんでそんなに堅苦しい話かたなんだよ。あほかお前は、普通に話せ」

「めめめめんご……」

「めんごってなんだ?」

相変わらず分かりづらい森口のボキャブラリーに眉をしかめ、俺は椅子に反り返って足を組んだ。

「で?」

「へ?」

「何でお前俺を避けてるの?」

もういっそ玉砕覚悟で一番知りたかったことを尋ねた。

回りくどい会話は俺の性に合わない。

殺るなら、ひとおもいに殺れ。














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