キミは嘘つき蝶々
「……何、怒ってんだよ。ダサ眼鏡のくせに」

呆然と呟く。

拒絶するような森口の後ろ姿が頭から離れなくて。

ズキズキ胸が痛んで。

シャツの胸の辺りを掴んで机に突っ伏した。

こんな風に、森口ごときの言動にダメージを受けて。
落ち込んだりする自分が、アホみたいで。

もうやめようかって、投げ出したくなるのに。

頭の中では森口のことばかり考える。

『アンナのことは私に聞いても無駄です』

『私には何も出来ないし、したくありません』

『そういうことなら諦めてください』

「………」

さっきネットで検索した、藤森アンナや藤森一家の華々しい経歴が脳裏をかすめて。

はあと重い溜め息を漏らしながら、髪をくしゃりとかきみだした。

「勘違いしてんじゃねーよ、バーカ」

俺はあんまり子役とか興味ないから、藤森アンナなんて知りもしなかったけど。

各賞を総なめにするくらいなんだから、多分、結構な有名人なんだろうと思う。

婆さんも女優だし。

親戚もそうで。

森口は、芸能一家に囲まれて育ったんだ。

きっと、今までも興味本意で近づいてくるヤツは、たくさんいたんだろう。

そのたび、絡まれたり、利用されたり

嫌な思いをしてきたのかもしれない。

だから、必要以上に警戒してるんだろうと想像はつく。



でも

ムカつく。

俺が知りたいのは藤森アンナのことなんかじゃない。

俺は

森口のことにしか、興味ない。




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