キミは嘘つき蝶々
多分、俺がいることは気づいているのに。

素知らぬ振りで本を読んでいる。

その無表情な横顔に、ますますイライラが募った。

「森口!」

ズカズカと森口の席へ向かう。

びくりと森口は肩を揺らして俺を見た。

森口の席の横に立ち、腕を組んで不機嫌に彼女を見下ろす。

そんな俺に、クラスの奴らが呆気にとられたように注目した。

俺と森口の接点が見当たらなくて、物珍しいのだろう。

俺の次の動向を伺うためか、固唾を飲むように、しんと教室が静まり返った。

「さっきの…」

「森口さん」

俺の低い声に被さるように、別の男の声が森口を呼んだ。

その人物に、ざわりと教室がざわめき出す。

教室の入口で無駄に爽やかな笑顔を振り撒き、立っているのは、昨日森口の家の前で会った、老け顔ムッツリの生徒会長、松宮だった。

「きゃあ!
松宮先輩!」

「いやーん。
なんでなんで?」

急に色めきたった女子の黄色い悲鳴が沸き上がる。

さっきまで俺にまとわりついていた美佳の仲間たちも、目をハートにさせて松宮を見ていた。

別にどうでもいいけど。

女の変わり身の早さって、なんかムカつく。





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