キミは嘘つき蝶々
森口の立ち上がる気配に、視線を戻す。

俺と顔を合わせないためかうつむいたまま彼女は、俺の横をすり抜け、松宮の方へと小走りに駆け寄っていった。

「……おい!」

……まだ、話の途中だろ!

そう怒鳴りたかったのに、結局俺は、彼女を引き止めることが出来なかった。

松宮の前に立つ森口の顔が、

まるで、あのムッツリスケベを好きだと言わんばかりに赤く染まっていたから。

松宮が長身を折り曲げ、囁くように何かを森口に告げる。

森口は驚いたように松宮を見上げ、小さい声で何かを答えた。

なんだよ、アイツ。

松宮とだったら、

普通に話すのかよ?

俺からは、小動物みたいに全力で逃げるくせに?




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