キミは嘘つき蝶々
「片桐、遅刻してきてよそ見するなー。
この漢文はテストにでるからなー」

いつの間に近づいてきたのか、変なパーマ頭の国語教師が、パコリと教科書で俺の頭を叩いた。

鈍く痛みが走る。

俺は、バンッと机に両手をつき、勢いよく立ち上がった。

ちなみに俺の身長は180センチある。

なので、必然的に十センチ下にいる、中年痩せがたパーマを見下ろすことになった。

パーマはアワアワと慌てふためきながら後退りし、眼鏡をずり下げて怯えたように俺を見上げてきた。

「な、なんだ?
片桐?ちょっと痛かったか?」

どもりまくりのパーマの冴えない顔を、黙ったまま、じっと見つめた。

次第にパーマの顔と森口の顔がダブっていく。

もし

本当に森口がムッツリを好きなのなら

俺は彼女を潔くあきらめるべきなのだ。

こんなダサ子に片想いの末フラれたなんて、みんなに知られでもしてみろ。

いい笑い者だ。

恥ずかしくて学校にも来られなくなる。

そうだよ。

もう、すっぱり諦めたらいいんだ。

こんな女、ムッツリにくれてやれば……

「くそっ」

想像しただけで、胸が苦しくなる。

どうしようもなく辛くなる。

俺は眉をさげ、手を伸ばして森口とダブったパーマの腕を掴んだ。

泣きたい気分だ。

なんで

「なんで、こんなに好きなんだよ?」





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