キミは嘘つき蝶々
「あなた、この間夏や宗也さんと、うちの前にいた方よね?
部屋に入り込むなんてどういうつもり?」

降ってくる冷たい声に顔をあげる。

そこに立っていたのは、森口……ではなく、

「……藤森アンナ」

その人で。

俺は呆然と、険しい表情の彼女を見上げた。

なんでだ?

森口だと思い込んでただけに、頭がパニックをおこす。

「なんで、あんたがここに?」

うっかり心の声が飛び出してしまった俺に、藤森アンナは不審げに眉をひそめて、腕を組んだ。

「それはこっちのセリフだわ。
不法侵入なんて、いい度胸じゃないの
今すぐ警察に突き出してあげましょうか?」

「や、ちょっと待ってくれ」

不穏な彼女の言葉に焦りながら、俺は痛む腹をおさえて立ち上がった。

「俺はただ森口カンナに会いたくて来ただけなんだ。
そしたら、花井にここで待ってろって………」

「夏が?」

藤森アンナが片眉をあげる。

俺はこくこくうなずいて、続けた。

「少しだけいい。
あいつと話がしたいんだ。
そしたら、すぐに帰るから……」

「……いいえ。今すぐ、帰って」

藤森アンナは俺を睨みつけたまま、外を指差した。

「何を勘違いしてるか知らないけど、森口カンナなんて人、家にはいないわ」

「は?」



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