キミは嘘つき蝶々
ようやく森口を追いつめたのは人気のない、校舎裏で。

息を切らせた俺たちは、向かいあったまま、膠着状態(こうちゃくじょうたい)に陥っていた。

はあはあと肩で息をしながら、酸素のまわらない心臓を静めていく。

息苦しくて、シャツのボタンを二つ外して、ネクタイを緩め、長めの前髪をかきあげながら目線をあげると、なぜか森口は真っ赤になってうつむいた。

「……………」

なんとも言えない沈黙が続く。

森口は、校舎の壁と一体化しようとしてるんじゃないかってくらい、ぴったり背中をくっつけて小さく身体を縮こまらせていた。

「なんで逃げんの?」

不機嫌に尋ねる。

「……え……う……」

森口は目を泳がせて、変なうめきをもらすだけだ。

「昨日さ、松宮と一緒に帰ったんだろ?
まさかお前、あいつと付き合ってんの?」

一歩距離をつめる。

森口は自分をかばうように手を突き出して、慌てふめきながら答えた。

「め、めっそうもございませんっ。
そ、宗也さんは、お、恐れおおくも幼なじみでいらっしゃいまして。
き、昨日は、お、おばあ様のお呼びで、た、たまたまご一緒させていただ、いたまででっ」

「ふーん。別にそれはどうでもいいけど」

本当は無茶苦茶気になってて、家にまで押しかけたけど。

その上夏が思わせ振りなこと言うから、悶々として一晩ねれなかったけど。

まあ森口が、むっつりとは、

た・だ・の、

幼なじみで、

ばあさんの呼び出しをくらったから、

仕方なーく、

一緒に帰ったって言うなら、なんら問題はない。





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