キミは嘘つき蝶々
俺は精一杯、気にしていないふりで、そう受け流して、もう一歩距離を縮め、森口の顔の横に手をついた。

「じゃあさ
お前、なんでそんなに俺を避けてんだよ?」

うつむいた彼女をのぞきこむ。

森口はあわあわと変な動きをしながら、口を開いた。

「あ、あの、片桐くんっ」

「あ?」

「ち、近いですっ。近すぎますっ」

「うるさい。
さっさと質問に答えろ」

イライラして額に青筋がたつ。

こいつはいつもジラしすぎだ。

こっちがどれほどビビりまくりながら質問してるか、わかっちゃいないんだ。

萎縮しまくりの森口は顔を両手でかばいながら

「む、無理ですっ。離れてくださああいっ」

情けない声をあげながら、ブンブンと首を横にふった。

「なんで無理なんだよ。
そんなに俺がイヤなのかよ」

ばんっともう片方の手を壁につく。

腕の中に囲う格好になって、森口はますますテンパった。

「ひぃっやっ。
いいいい、イヤとかではっ、なななないですけどっ。
でででもっやっぱり、だ
だだだダメですっ」

「だから何がダメなんだよ?」

もう一度、そう繰り返す。
森口は眉をハの字にたらし、泣きだしそうな顔をしながら、心臓をおさえた。

「か、片桐くんが、ち、近づくと、む、胸がばっバクバクして、し、死にそうになるんです。
だから、ははは、離れてくだ……きゃあっ!」





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