キミは嘘つき蝶々
『……さあ。演技かどうかは……。
二人は何もかもが違うからね。
趣味も話し方も食の好みまで』

松宮は難しい顔でそう言って、腕をくんだ。

『しかもアンナちゃんには、カンナちゃんでいる時間の記憶がない。
これが解離性健忘と呼ばれる疾患なら、DIDの可能性も考えられる』

『……DID?』

聞きなれない病名に、首を傾げて眉を寄せる。

『ああ、ごめん。DIDは解離性同一性障害のことで……。
まあつまり、おおまかに言うと……多重人格ってことだよ』

『………』

だったら最初から、そう言えばいいんじゃねーか?
わざわざ分かりにくい略称を使う必要があるのか?

そのサラサラヘアー、ハゲる前にむしりとるぞ、コラ。



突っ込みたいのはヤマヤマだったが、心が広い俺様は、黙って聞き流してやった。

だいたい、今はそんなことどうでもいいんだ。

多重人格って、

一人の人間の中に二人の人格がいるってことだろ?

でも、そうだとしたら

森口は……







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