恋する*spring~春をうられたわたし~【完結】
「翡翠、落ち着け」
そう言われても無理だ。
落ち着けるわけがない。
――――カチャ
静かに開けられたリビングの扉。
ハッとしてそこに目を向けるとユリが居た。
「ひすい……?」
名前を呼ばれユリに近づく。
「ひすい……」
俺に気づいたユリはまた名前を呼んで近寄り、俺の腹部の服を両手でぎゅっと掴んだ。
その手が微かに震えている。
これは………
と思い、ユリを優しく抱きしめた。
すると、手の震えが止まった。
「大丈夫か?」
「……うん」
ユリは静かに答えた。
「寝室に行くか?」
「ひすいは……?」
「俺はあいつらとまだ話す事がある」