恋する*spring~春をうられたわたし~【完結】
わたしは全部話した。
神奈川の施設で育ったこと、そこの暮らしが嫌で夜遊びを始めてあんなことになったこと…………親を知らないこと、捨てられたかもしれないこと。
全部話した。
翡翠は、その話しをちゃんと聞いてくれた。
「俺はユリが捨てられたとは、思わない。
何か理由があったかもしれないだろ?」
「そうだけど………でも!」
「それに、ユリが施設で育ってなかったら、俺はユリと出会えてなかったかもしれない………
俺はお前が施設で育ったとか、前の暮らしのこととか気にしない。
だってユリは、俺の傍にいる。俺を好きでいてくれる。
それだけで十分だ」
わたしの言葉を遮って翡翠は言ってくれた。
嬉しくて涙が出た。
翡翠はいつも、わたしの不安を吹き飛ばしてくれる。
安心させてくれる。
「ありがとう……翡翠」
そう言って、翡翠に抱き着いた。