恋する*spring~春をうられたわたし~【完結】
「まだ、十分じゃない。
君が欲しくなった」
そう言って首筋に顔を埋めた男の人。
また……わたし…………
翡翠………翡翠……
助けて………
「珠莉!!」
翡翠?
翡翠の声が聞こえたと思ったら、男の人がわたしから接(は)がれた。
翡翠は男の胸倉を掴んで睨みつけた。
「お前、珠莉に何をした……」
翡翠の声がいつもより数倍低い。
「さあ?その娘に聞いて下さい」
そう返ってくると翡翠は、男の人を殴った。
「ひ、翡翠!ダメ!」
わたしはもう一回殴ろうとしていた翡翠の腕を両手で掴んで止めた。
「いつも冷静な黒崎ホールディングズの社長がこんなに怒るなんて。
ますますおもしろいね、君」
わたしを見て言った。
翡翠のこと、知ってるような言い方。
「お前………何がしたい」
「その娘、気に入っちゃいました。
かわいいし、いい匂いしますよね?」