恋する*spring~春をうられたわたし~【完結】
「…………」
翡翠は何も言わずに、睨みつけた。
「そんな怖い顔すると、その娘が怖がりますよ」
「うるせぇ………
お前、もう珠莉に近付くんじゃねぇ……」
「はいはい。
わかりましたよ」
「チッ………
早くどっか行け」
胸倉を離して男の人に言った。
「じゃあね。"珠莉"ちゃん?」
そう言って男の人はどこかに行った。
「翡翠……わたし………」
「珠莉……来い………」
翡翠はわたしの手を握って歩き出した。
前を歩く翡翠の顔は見えない。
翡翠………怒ってる?
翡翠はエレベーターの前で立ち止まり、上へ行くボタンを押した。
「翡翠?
パーティーは………?」
「パーティーはもういい」
そう答えた翡翠の声は、まだいつもより低い。