恋する*spring~春をうられたわたし~【完結】
歩きだしたわたし
たった一つの故郷へ
聖真さんはあれから何度か社長室に訪れた。
その度に翡翠の機嫌が悪くなり、わたしも翡翠から離れなかった。
だけど、大きく変わったことはなく、聖真さんは何がしたいのか全くわからなかった。
一ヶ月くらいたったある日。
翡翠が来週出張に行く事が決まったと言った。
わたしが翡翠と暮らし始めて、出張に行くのは初めてだ。
わたしは寂しい気持ちを抑え、"そうなんだ。いってらっしゃい"と答えたんだけど。
「珠莉も行くんだ」
「え?」
だって出張でしょ?
付いて行きたいけど、邪魔になるよ………
「今回は理恵も颯も輝秋も行く。
お前を一人、ここに残して行けない」
出張ってそんな大勢で行くものなの?
「わたしが行っても……邪魔にならない?
大丈夫?」
「そんなことよりも、珠莉はどうなんだ?
行きたい?行きたくない?」
わたしは………もちろん……