うすのろ馬鹿マヌケ
 あれから何日か経ち授業も本格的に始まってきた。
忙しさも以前より増し、二年になったという自覚を持つ。

クラスにもなんとか溶け込むことが出来た。

最初は不安で仕方なかったが、意外と話しやすい人や打ち解けやすい人が多かった。



ミシンを目の前にし、雲雀は悩んでいた。

ミシン糸がなくなってしまったのだ。
こういう場合は教師に申し出て購買に行かせてもらうのだが、担任はあの不知火。
どうも言いにくい・・・。


しかしぼんやりとしていても無駄に時間を過ごすだけだ。

雲雀は仕方なく重い腰を上げた。


「先生、購買行ってきていいですか?」


雲雀の問いに不知火はじろりと睨む。
まるで蛇に睨まれた蛙のようになり、雲雀は目線を落とした。

不知火は目付きが悪い上に、柄も悪い。
外見からは服飾専門学校の教師には見えないだろう。


「何か忘れたのか?」


「ミシン糸、なくなっちゃったんです・・・。」


不知火は自身の作業の手を止め、一息ついて言った。


「なら仕方無いな。すぐ帰ってこいよ。」


雲雀は返事をし、財布を持って階段を下りはじめた。

早めに教室に戻らなければ不知火に何を言われるかわからない。
どうやら雲雀は不知火に目を付けられいるらしい。
自身で強くそう感じる。

その目の付けられ方がいい意味なのか悪い意味かはわからないが・・・。



1階を目前にして、雲雀は最後の一段を降りた。

その瞬間、何者かに腕を掴まれた。


「うぎゃっ!!!」


不意の出来事に雲雀は妙な声を上げてしまった。




目の前には、何日か前に自分を“ブス”と呼んだ男が立っていた。
< 10 / 34 >

この作品をシェア

pagetop