うすのろ馬鹿マヌケ
 「絶対嫌や。」


隼は冷たく一言だけ言った。

その言葉に明らかに悲しそうな表情をする雲雀。


「そもそも、作図なん一年時からやっとるやろ。
なんで今さら俺が教えなあかんねん。断る。」


雲雀はその言葉を聞くと、しょんぼりと俯いた。


「あたし、作図書くの下手なんです。
パターン展開も、パターン作るのもうまくならなくて・・・。

何度も先生に怒られて訂正されて、この前あった作図点検でも物凄い数の訂正線入れられちゃって。
もうあたしの作図じゃなくて先生の作図になっちゃったくらいなんです。」


雲雀は数日前に不知火に怒られたことを思い出した。



“お前は一年間なにをやってたんだ?”



そう言われた。

正直、胸にこたえた。


自分なりに頑張って、努力してあれだったというのに。
精一杯書いたものを否定された。


「それはお前が書かんからあかんのやろ。」


雲雀は隼を見た。

隼は一切表情を変えず、手を動かしながら口を開く。


「作図が苦手や言うて、書かんから。
そんなもん上手くなる訳無いやろ。

俺かて同じや。
パターンばっかり書いとるから、縫製なんてちっとも上手くならへん。

技術科は三年なれば縫うことも無くなるからええけど、お前はちゃうやろ。
書かな上手くならんで。」


隼がこんなに喋ったのは初めてかもしれない。
雲雀はそんなことを思った。


いつもは一言二言ぽつりと話すだけだ。

しかも的を得たことを言っている。


隼はどれだけのパターンを書いたのか。
どれだけ紙に直線を描いてきたのか。


雲雀はそんなことが気になった。
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