うすのろ馬鹿マヌケ
 雲雀は文化祭が大好きだった。
文化祭の為にこの学校に入ったと言っても過言ではないほどだ。


中学生の時に初めてこの学校の文化祭に来た。

そうして文化祭の目玉でもあるファッションショーを見て、雲雀の人生は大きく変わった。

腹の底に響く軽快な音楽。
色とりどりのスポットライト。
その真ん中を歩く、煌びやかな服に身を包んだモデル達。


こんな世界があったのかと、初めて知った。




昨年は百合と一緒にショー関係の係に就いた。

ショーに関係する係は他の係よりも明らかに仕事量が多い。
その上時間帯も夜遅くまでかかったりする。

けれどやはりやるだけの価値はあった。
楽しくて仕方が無かった。



けれど雲雀には夢があった。


文化祭のショーでは、校内全体から希望者だけではあるがデザインを募集する。
それをショー用に構成してどのような服を作るかを決めていく。

雲雀はショーに自分のデザインを選んでもらうのが夢だった。


昨年は一人で五枚ほど出したが、全て見事に選考漏れした。


今年こそは選ばれたい。

その思いで一杯だった。




そんなことを思っている矢先、あの人間に呼び止められた。



「おい、ブス。刺繍の課題手伝え。」


隼は王冠のネックレスを差し出してそう言った。
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