うすのろ馬鹿マヌケ
 けれど先程から気にかかることがあった。

隼は瓢に対してずっと敬語を使っているのだ。
この自己中心的な男が敬語を使えること自体驚きなのだが、どういう関係なのか少し気になった。


「あの、瓢さんは安城先輩とどういう関係ですか?
技術科の先輩とかですか?」


「いや、学年は同じだよ。
俺が技術科の一年の時にクラスが一緒でさ、二年なってクラスが分かれても仲良しなの。
ほら、こいつ友達いないじゃん?
だから仲良くしてあげてんの。」


「ああ、成る程。」


そこで話を聞いていた隼が口を挟む。


「気色悪いこと言わんといてくださいよ。
それにお前もそれで納得すな。」


「意地っ張りで困るなぁ、隼ちゃん。」


「だから隼ちゃん呼ぶのやめてください言うてるじゃないですか。」


なんだか二人のやりとりを見ていると楽しくなった。
いつもの偉そうな上から目線の隼はそこにはおらず、素の姿を見たような気分になる。

瓢も一見とっつきにくそうな雰囲気だが、かなり気さくで面白い人だ。


「じゃあなんで安城先輩は瓢さんに敬語使ってるんですか?」


「年上やから常識やろ。」


「こいつさ、俺がタメ語でいいって言っても聞かねぇの。
科が変わってもずっと敬語。」


「科が変わった?」


「こいつはそのまま技術科進んで三年なったけど、俺はモデル科いったから。」


「モデル科なんですか!?」


「そうだよ。たまに雑誌とかでも使ってもらってるから見てあげてね。」


雲雀はあんぐりと口を開けた。

どうりでさっきから周りの視線を感じると思った。
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