うすのろ馬鹿マヌケ
 隼はすぐに作業へと戻った。

ひたすらに真っ直ぐな線を引く。
それは迷うことも無く、考えることも無く、ペン先が行く先を知っているように動く。


「なんで断ったんですか?」


そう訊くと隼はじろりと雲雀を睨んだ。


「興味ない。」


「学祭ですか?」


「それ以外の何があるっちゅうねん。
面倒くさいだけやろ、あんなもん。」


その言葉は雲雀の胸に冷たく刺さった。

一年前の今頃、つたない絵を何枚も描いて応募した。
学園祭で自分のデザインが使われることを願って。


けれどそんなものは夢のまた夢だった。


何枚も描いた絵型は結局ショーには使われず、何にもならない“ゴミ”へと変わった。


「先輩はいいですね。」


雲雀は小さく呟いた。


「先輩には、望んでない方から幸運がやってくるんですから。
自分で行動しなくても向こうの方からやってくるじゃないですか。」



「知ったような口利くな。」



雲雀は隼の表情を見て何も言えなくなってしまった。


いつも冷たい表情をしているが、さっきの表情は今まで見たどの表情よりも冷たかった。



目が、怖かった。

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