うすのろ馬鹿マヌケ
 隼は食べ終わったうどんの器をずっと見つめていた。
残り汁をぼんやりと見つめる。


「じゅーんちゃん。何考えてるの?」


瓢は隼の顔を覗き込むようにして問いかけた。
そしてニヤニヤと笑う。


「瓢さん、“隼ちゃん”呼ぶのやめてもらえますか?
気色悪うてかないませんから。」


瓢は隼のことを“安城”といつもは呼ぶ。
しかしたまにふざけて“隼くん”だとか“隼ちゃん”と呼ぶのだ。

正直いちいち突っ込みたくは無いのだが、止めないといつまでも呼び続けるので口を出さずにはいられなかった。


「安城、何か企んでるだろ?」


瓢がそう問いかけても、隼はポーカーフェイスのままだ。

相変わらず感情を顔に出さない。
だから何を考えているのかさっぱりわからないし、今日の気分さえも読み取れない。


「さっきのブス、使えんかなー思て。」


「使う・・・って?」


そこでほんの少し口角を上げて隼は答えた。


「パシリか何かに使えんかなて、考えとったんです。」


その言葉に瓢は噴き出した。


「あんなちっちゃい子パシリにするのかよ。かわいそー。」


まるで他人事のように瓢は言った。
実際他人事ではあるが・・・。


「朝から俺の気分害した報いですよ。」


そんなことは取るに足らないことだとでも言うかのように、隼は席を立った。
相変わらずの無表情。


本当に、あいつの考えていることはわからない。

瓢は再確認した。

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