嘘つきな彼女は、今日も嘘をつく。
「由衣ちゃーん。眉間にシワ寄ってるよー」
「……」
「由衣ちゃん冷てぇ」
「俺は男だぞ?由衣“ちゃん”ならどっかに要るんじゃないか」
昼休みのチャイムと共にやって来た、このいかにもアホな奴は、一応俺の友達の 馬渕良介。
そして嫌味たらしく、俺の事を由衣ちゃん と呼ぶ。
それは俺の名前が 古川(ふるかわ)由衣(ゆい) だから。
別に俺は自分の事を“俺”と呼ぶ女じゃない。
健全な高校二年生男子だ。
なのに名前が由衣。
もちろん親を恨んだけど、今はさほど気にしていない。
…なんて言ったら嘘になるから正直に
「下の名前で呼ぶな」
毎日良介にそう言う。
けど、良介が俺のことを上の名前で呼んだ事は一度もない。
それでも許せるのは、まぁ2歳からの仲が関係あるのかもしれない。