ロシアンルーレットⅢ【アクションコメディー】
ベッドサイドに視線をやれば、パイプ椅子に腰掛けて雑誌を読んでいる乃亜がいた。



酷く重い右腕を、なんとかシーツから浮かせて伸ばせば、その雑誌を持つ腕にすぐ触れた。


途端、弾かれたように乃亜は振り返った。俺を見下ろして目を見張る。


その瞳は、たちまち潤んでゆらゆらと揺れた。



ああ、また俺、乃亜を泣かせちゃったし。



片肘を立て、よっこいしょ、と起き上がった。


右手で乃亜の頬に触れて、

「乃亜、ゴメ……」

謝ろうとしたら、途中で口を塞がれた。



乃亜はその華奢な右手で俺の唇に触れたまま、頭を左右に振った。

そして――

瞳は濡れたまま、それでもふんわり微笑んだ。


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