ロシアンルーレットⅢ【アクションコメディー】
いつの間に移動したのか、仁科の傍らに龍一が立っており、そして、蹴りを阻止したのは、龍一の踵だった。


正確に脛を狙って差し出されたそれを、ゆったりと地に戻しながら、

「様子が変だ。死なせたら意味がないんだろ?」

龍一はなんら悪びれることなく静かに言い、仁科に射抜くような鋭い視線をやる。



「て、てめぇ……」

と、いきり立つ仁科を尻目に、龍一は落ち着いた様子で少女の傍らにしゃがみ込む。


そして、その手首に、三本の指で大事そうに触れた。



訳もわからず仁科は、その様子を無意識にジッと見守った。


「脈が弱い。彼女、食事は?」

振り返るように見上げて問う龍一に、「んなもん俺が知るかよ」と仁科は吐き捨てるように答えた。



「多分、重度の脱水症状だ。放っておけば死ぬ」

龍一は淡々と告げた。


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