ロシアンルーレットⅢ【アクションコメディー】
トレーラーハウス内のベッドに、龍一は抱いていた少女をそっと寝かせた。



少女の蒼ざめた唇から絶え間なく漏れるうわ言は、龍一にも聞き取れない。

身も心も衰弱しきった姿に、成すすべもない龍一の、胸は軋むばかりだった。



ベッドサイドに膝を落として少女を見下ろし、その艶やかな黒髪をそっと撫でてやる。

それに安心したのか、視点の定まらない虚ろな瞳を、少女はゆっくりと瞼で覆った。



生きて返してやりたいと願うも、それが不可能だということは龍一の短い経験からでもわかる。


龍一が少女にしてやれることなど何もなかった。

ただ、彼女の残り少ない時間を、少しでも安らかに過ごせるように尽力するぐらいだ。


それすらも儘ならない現状に、龍一は血が滲むほどに唇を噛みしめた。




「金は本当に入るんだろうな?」

龍一が背後の気配に向かって、唐突に声を発した。


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