ロシアンルーレットⅢ【アクションコメディー】
組対(組織犯罪対策課)のオフィスは、署員は出払っているらしく、ガランとしていて気味が悪いぐらいに物音一つしない。

一瞬、誰も居ないのかと思った。



照明のスイッチを押して、点けたつもりが逆に消えた。だから、点いていたんだと気付く。



目は開いているけど、何も見えていない。多分、見ようとさえしていないんだと思う。




「皆人くん」


囁くような女性の声で名を呼ばれ、声のする方へ視線を走らせた。



デスクが並んでいるだけの無機質な空間、その奥に誰かが居る。視力が悪い訳でもないくせに、何となく目を細めて凝視した。



赤城課長のデスクに窪田が我が物顔で腰掛けていた。彼とデスクを挟んで向かい合って、どこかから持って来たキャスター付の椅子に腰かけて居た女性が、ゆっくりと立ち上がった。


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