ロシアンルーレットⅢ【アクションコメディー】
「みゆっち、何言っちゃってんだよ? 兄貴が自分から望んでとか……そんな訳ねぇだろ? みゆっち、ショックで頭おかしくなってんじゃねぇの? 目ぇ覚ませって」


失笑混じりに悪態をつけば、みゆっちの表情が哀しげに曇る。それを見て、すぐに失言を後悔する。


胸が、死ぬほど痛んだ。



「龍一は、表向きは平穏な生活を望んでいるように見せているけど、結局、誰かに必要とされないと……誰かの役に立たないと生きていけないのよ」


「そんなの……みゆっちが必要としてるし、みゆっちの役に立ちゃいい。だろ? 見ず知らずのその他大勢なんて、どうでもいんじゃね? そんなもん糞くらえだって」


「もし仕事を断って、それでバイオテロが起こったとしたら、龍一はきっと、何もしなかった自分を責めるわ。それは龍一にとって、死よりも辛いことよ。

龍一は、死ぬよりも辛い苦しみを味わうのよ。そうでしょ?」


ハッキリとそう言い切ったみゆっちは、逞しいほどに凛としていて。



ただ純粋に、綺麗だと思った。



兄貴の死を恐れているのは、兄貴ではなく俺だ。


全部が、俺の独り善がり。幼稚な我儘だ。


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