ロシアンルーレットⅢ【アクションコメディー】
だからって、この現実を受け入れるなんて……。

無理だ、俺には出来ない。



身体の芯部で堪えていたものが弾けた。それは嗚咽となって口から飛び出した。



「ダメだ。兄貴が死ぬなんて、そんなのダメだ。俺には受け入れらんねぇよ。笑えよ。ガキみたいだって笑えよ。俺には兄貴が必要なんだよ。死ぬなよ、兄貴……」


見っとも無く泣きじゃくって、思いの丈を吐き出した。



「おいで、皆人」


優しい声に呼ばれ、顔を上げてみゆっちを見た。みゆっちは両手を広げて、温かい笑みをこちらに向けていた。



ゆっくりとみゆっちに歩み寄り、その小さな身体に抱き付いた。大きな腹が邪魔をして、巧くいかないけど。



みゆっちは妊婦のくせに華奢で、腕にほんの少し力を込めるだけで壊れてしまいそうだった。なのに、包み込まれているような安心感があって……。


まるで、俺の方が抱かれているみたいだった。


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