ロシアンルーレットⅢ【アクションコメディー】
ははっと、小さく声を漏らして笑うと、窪田はオフィスの出口へ向かう。そして、一度も振り返ることなく出て行った。



少し距離をとっても俺の間近にある、みゆっちの突き出した腹に視線を落とした。



「俺、叔父さんになんのか……」


何となくそんな呟きが口からこぼれ出た。



「うん」


「どっち? 男?」


「ううん、女の子。龍一、もう今からすごい溺愛っぷりで。生まれたらどうなんの? ってぐらいに。私、この子にヤキモチやいちゃうかも」


笑い混じりに言って、みゆっちも大きく膨らんだそれに視線を落として、愛しげに撫でた。



「触っていいか?」


「どうぞ」



ぎこちなく触れたら、突然に中からグイと押し返されてビビる。


反射的に手を離して、「こいつ、蹴りやがった」と文句を言えば、みゆっちはふふっと笑った。


俺も笑う。




どうしてみんな、自分の気持ちより愛する人の気持ちを優先させられるんだろう。



その潔いほどの強さに――

また泣けた。


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