ロシアンルーレットⅢ【アクションコメディー】
「日置、他に出口は?」
谷口が、胸ポケットの万年筆に仕込まれている盗聴器を通して、日置に尋ねた。
龍一と少女に銃を向けたまま、一歩一歩後退する蜂須賀は、明らかにエレベーターを目指している。すぐ横の研究室へ続く通路が出口と繋がっているが、それ以外にもあるはずだと谷口は確信した。
本部の日置がキーボードを忙しく叩く音が無線越しに聞こえる。
この研究所の見取り図を出しているのだろう。そして――
『二階だわ。二階に感染廃棄物置き場があって、業者トラックが出入り出来るようになってる。二階エレベーター西、三番目の扉』
日置は捲し立てるような早口で言った。
蜂須賀がエレベーターに乗り込み姿を消したと同時に、
「させるか」
ボソリと呟いて、谷口は駆け出した。