ロシアンルーレットⅢ【アクションコメディー】
「蜂須賀はどうした?」

窪田は再び静かに問う。



「例のウィルス持ってるから、下手に手ぇ出せませんでした。この男にヤツの行先を……」


「ふっざけんな! そんな悠長なこと言ってる暇ねぇんだよ。もう抗体はねぇし? ちょっとぐらいバラまかれたって、あの山奥だったら被害は知れてる。なんで止めなかったんだよ? 

あんたは、そのチャンスがありながら棒に振ったんだ」


「よせ、皆人。谷口は正しい。『知れてる』被害なんか一つもない、違うか? 怒りに呑まれるな、頭を冷やせ」


窪田にそう言われ何も言い返せず、悔しくて舌打ちした。



みゆっちは椅子に腰かけたまま俯いてじっとしている。


もう……家に帰った方がいんじゃねぇか?


ここで待ってたって――

兄貴は帰って来ない。


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