ロシアンルーレットⅢ【アクションコメディー】
やがて――


「だろうな」

と。谷口さんは伏し目がちにポツリとこぼした。



「何が『だろうな』だよ、俺の言ってる意味、ちゃんとわかってんの?」


「わかってるわ、バカヤロウ! お前こそ、なんにもわかってねんじゃねぇか? たった一つの抗体を失うとしたら、龍は……龍ならどうする?」



そんな……そんなまさか……。



「自分が、抗体に、なる……?」

思い当たる可能性を口にした。


死ぬ確率の方がずっと高いのに? 抗体保持者になれなかったら、そんなの犬死にじゃねーか。


みゆっちが居るのに。もうすぐ兄貴は父親になんのに。そんなバカみたいなこと……。



有り得ないとは言い切れないか。



「じゃあ兄貴はわざと……」


あの時兄貴は、目をつぶれなかったんじゃなくて、



つぶらなかったのか……。


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