ロシアンルーレットⅢ【アクションコメディー】
食堂の端っこで、呻き声を上げながら胃の内容物を吐き出す間宮くん。
ゴミ箱ん中に、頭半分以上イってんじゃねぇか?
まだ腐敗臭もないし、何によって嘔吐反射が起こったのか、俺にはわからない。
「悪いけど……時間がないんですよね。この三人の名前、教えて貰えますか?」
ゴミ箱からようやく頭を引っこ抜いた間宮くんは、不満げな――というか恨めしそうな眼差しをこちらに向けた。
よほど苦しかったんだろう、ゆっくり肩を上下させながら、懸命に呼吸をしている。
「三木さん、張本さん、長縄さん……うぇっ……」
そしてまた、間宮くんの頭はゴミ箱にイン。
「三木、張本、長縄」
あらかじめ繋いでおいた電話の相手に、彼が口にした三人の名を告げて、一旦は携帯のオンフックボタンを押した。
情報とれたら、折り返し掛かってくるだろう、多分……。
「あんた、よくそんな平然としてられるな? 刑事には心ってもんがないのかよ?」
間宮くんは口元を手の甲で拭いながらそう言って、汚い物でも見るような目線を俺に向けた。
別に腹は立たない。何とでも言えば? って思う。
俺は刑事だ。次なる被害を阻止する義務がある。
「残念だけど……死者を悼んでる暇なんかねぇよ。俺は一分一秒だって、『今、在る命』を救うために使うね」
言ってはみたものの、思わず苦笑してしまう。
けど、間宮くんは不本意ながらも納得したみたいで、その口をきゅっと真一文字に結んで、目を伏せた。