ロシアンルーレットⅢ【アクションコメディー】
「捨て駒だろうが何だろうが、そんなもんお前に関係ねぇだろ?」


「関係ない訳ねぇだろ。捨て駒ってことは命懸けだ。こっちも用心してかからねぇとな」


軽口を叩いてるところを見ると、ヤツは至って冷静だ。もしかしたら、説得に応じるかもしれない。



僅かな望みに縋るしかない。悲しいけど。


「俺だって命は惜しいって。当然だろ? なぁ坂下、お前の目的はその佐村一人だ。時間をくれよ。頼むから、関係ない人たちは解放しろ」



周りが騒ぎ出した。一人の患者がパニックに陥って、出口へ向かって狂ったように走り出す。



「全員動くな! 死にたくなけりゃな」

右腕をその患者に向かって伸ばした坂下。その手には銃が握られていた。



今正に、部屋から飛び出そうとしていた患者はピタリと動きを止める。



「落ち着け、坂下」


「落ち着いてるよ、有坂皆人」


「あの、フルネームで呼ぶの、そろそろやめて?」


「お前って相変わらず、とぼけたことしか言わねぇのな? それ素で言ってんのか? それとも俺を油断させる策略か?」


「素だよ、素っ! とぼけてねぇよ、あいにく本気だよ。だし、あんたは最初っから油断しっ放しだろ? 一番出来の悪い俺だもんなぁ、しょうがねぇよなぁ」


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