ロシアンルーレットⅢ【アクションコメディー】
「ありがとう」

龍一は顔をくしゃっとさせて満面の笑みを浮かべた。



へっと、高広は鼻を鳴らして笑う。


「礼言われるようなこと、何もしてねぇよ」

と、どこか不満げに漏らしながら、高広は右拳で龍一の右肩を軽く突いた。



「さて、俺も仕事すっか」

言って谷口は、後ろ手に手錠を掛けられ並んで座っている、坂下と佐村の元へと移動した。


「おら、行くぞ」

片手で佐村の腕を、もう片方の手で坂下のそれを掴んで同時に引き上げた。



既に皆人は運び出され、リハ室は元の静寂を取り戻していた。


佐村と坂下は、谷口に大人しく従い部屋の出口へと歩き始めたが、龍一と高広の前で不意に、坂下が立ち止まる。



「あーんな、何の役にも立たねぇガキのために、大の大人二人が必死になりやがって……。くだらねぇ」

呆れたように呟いて、坂下は小さく嘲笑を漏らした。



龍一は目を伏せ俯きがちにフッと笑みをこぼす。そうしてからすぐ、再び視線を上げ、坂下を真っ直ぐ見詰めて言った。


「坂下、お前の発砲が俺より僅かに遅れたのは――

――お前が躊躇ったからだ」


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