ロシアンルーレットⅢ【アクションコメディー】
けど一人が死んで、残る二人は服役中だ。

睦月くんは誰も雇わず、一人っきりで頑張ってるとか。聞いた話だから、正確なことは知らねぇけど。




相談者の中年女性は、大きなヒップをわっさわっさ揺らしながら退室し、替わって部屋に入って来たのは、清楚で可憐な若い女性。


長いストレートの黒髪は、シャンプーの宣伝に出てくる女性タレントに負けず劣らず艶やかで。

女性にしては長身の、整ったしなやかな身体を、緊張のためか妙に縮こまらせて、美しいその人は遠慮がちに俺の目の前に腰掛けた。



彼女にプロポーズできないことが、残念で仕方がない。

だってもう既に、俺の奥さんだからね。



何度でも惚れそうだし。罪な人だね、有坂乃亜さん。



「えっと、お嬢さんの相談は……」

彼女に渡されたA4用紙に視線を落として、相談内容を一応確認。


「『夫が子どもっぽくて、将来が不安です』?」

読み上げてから乃亜に視線を戻せば、彼女は堪えきれずにクスクス笑い出した。



「乃亜、会えてすごく嬉しんだけど……。俺、勤務中。悪戯はやめて?」

傷つけないように、できるだけ優しく注意したつもり。


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