ロシアンルーレットⅢ【アクションコメディー】
黙ったまま見詰めていると、チワワくんは酸素マスクで覆われた口を、ほんの少しだけ開いた。


「しゃべんなって」

言うと、チワワくんは再びゆっくりと閉じ、その両口角を力なく上げた。



「聞くだけなら平気だろ? だから黙って聞けな。

お前に色々聞きたいことあるんだけどさ、今はいいや。まあ、お前が無事で何よりってことで。

――って、なんか気持ち悪ぃこと言ってんな、俺」


照れくさくて苦笑すると、チワワくんも、それに応えるように目を細めた。



「ベタだけどさ、『お前には借りがある。それ返すまでは絶対に死なせねぇ。お前を殺るのはこの俺だ』、みたいな?」


ああ、なんだよコレ。

昭和の青春ドラマみたいだし。


俺、ぶっちゃけ励ますのとか苦手なんだよね。



けどチワワくんは、コクリと小さく頷いた。


愛しい野郎だぜ、チキショー。


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