ロシアンルーレットⅢ【アクションコメディー】
「ああ、あった」


探し物は、部屋の中央に置かれたガラステーブルの上にあった。この狭い部屋では、嫌でも目に留まるような場所だ。



蜂須賀は故意に忘れたのだ。

しかも、故意だということに、石原が気付くように、だ。



組織のナンバー2の蜂須賀が、自分のことを疑っていることを、石原は薄々だが気付いていた。

だから、危険を冒してまでも、早々に情報入手に踏み切ったのだ。


だが、蜂須賀がこんなに早く動くとは、予想外だった。



男は財布を拾い上げると、何かを思い出したように石原に視線を寄越した。


「お前こそ、蜂須賀さんに何の用だ?」


「最近仕事がないからさ、蜂須賀さんに女でも紹介してもらおうと思って」


石原が迷わず答えを返したからか、男は疑うことなく鵜呑みにした。


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