ロシアンルーレットⅢ【アクションコメディー】
マンションを出た所で石原と男は別れ、それぞれが逆の方向へと歩き出した。



男は三つ目の角を曲がり路地裏に入り込むと、足を止めた。


男の正面には、壁に背中を預けて立つ男。


20代後半、緩くウェーブのかかった長めの明るい茶髪、整った中性的な顔立ち、どこか中世ヨーロッパの貴公子を思わせる風貌。

ダークスーツはミスマッチのようであるが、細身の身体によく馴染んでおり、不思議なほど似合っていた。



石原と別れた男は、その美しい男に財布を手渡しながら言った。


「言われた通りにしてきましたよ――


蜂須賀さん」



蜂須賀と呼ばれた男は満足気に薄く微笑み、そのあまりにも妖艶な美しさに、男は思わず喉を鳴らした。




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