―罪―
駅前に新しく出来たカラオケボックスは、何がコンセプトなのかまったくわからなかった。
とにかく高級感を出したかったのか、外観はヨーロピアン風の城をモチーフにしているようでいて、内装は白と黒でやけにシックに統一されていた。
外観と内装のイメージがまったく合っていなくて、思わず首を傾げてそれらに魅入っていると、彼に声を掛けられた。
「行くぞ」
珍しく聞く彼の声は、低音と高音の間を行き来する微妙な音で、その微妙な音ゆえか、もう一度、もう少しと、願わずにはいられない声。
橋で会う彼は、私を見る事もなく、声を発する事もほとんどない。
ただ静かに二人で街を見下ろすだけ。
今でも増え続ける家や人々の動きを、じっと見つめながら時を過ごす。