―罪―
いつもそこに立つ私の手を握るのは、彼からだという事実が私の罪を深め欲を煽る。
あの時間、握られた手から生まれる甘美な蜜は、誰にも知られてはいけない。
それが例え、親友と呼べる相手だとしても……。
「ちょっとトイレ」
親友に小さくそう声を掛けて、潤が楽しげに歌う声を背に部屋を出る。
「どこ行くんだよ、俺の歌聞けよっ」
追いかけるような潤の声に笑いながら、トイレに向かう。
トイレはやはり白と黒で統一されていた。
手を洗い、真っ黒の扉を開けると、そこに彼は立っていた。
「俺の歌聞けよ」
先ほどと同じ言葉を繰り返す彼が、黒い壁に凭れたまま俯いていて。