―罪―
 

そんな少し拗ねたような、どこか甘えたような彼の姿を見ながら、私の犯す罪がどれほど深いのかを考える。



握られる手から滴る蜜は、小川に流れどこへ向かうのか誰にもわからない。



それは私にも彼にも誰にもわからない。



人には必ず裏と表がある。



白と黒のように相対するそれは、正反対の位置にありながらバランスと調和を保つ。



白には黒。



表には裏。



そして罪には蜜。



罪は深ければ深いほど、その蜜は甘く私を惑わせる。



「ごめん、聞くよ」



笑ってそう言うと彼が手を出してきて、私の手を握り締めた。


< 16 / 23 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop