―罪―
 

夕暮れの陽が街を柔らかく包みこむ、この瞬間がなにより綺麗で美しい。



「明日、雨かな?」



街を見下ろしながら、呟く私の言葉に彼は黙ったまま返してはこない。



それでも私は気にすることなく街を見下ろし、夕暮れの朱に染まる空と街を見つめ続ける。



繋がる手にこもる力は、強くもなく弱くもない。



街を見つめ続ける私は、彼を見る事はほとんどないけれど、それは彼も同じだった。



いつもしゃがんだ姿勢で同じく街を見つめている彼。



時々、鬱陶しそうに柔らかく茶色い髪を掻きあげる。



制服のシャツから覗く胸元には、鎖骨が浮き上がり、そこに揺れる革紐の先にはクロスのトップ。



細い身体から伸びる手足は長く、ゆっくりと気だるげに動く。


< 4 / 23 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop