その日、地球は滅亡した
けれど、泣いていても仕方ない。
ぐしぐしと腕で涙を拭った俺は赤い目で前を見た。
とりあえず、頬を抓ってみる。
うん、やっぱり痛い。
夢ではないことを改めて実感させられた。
「飯食いにいこーぜ!」
「おう。」
中からそんな声が聞えて、俺は慌てて庭の木に身を隠した。
(そういえば昼に、飯食いに行って...んで、帰りにコンビニ寄って)
19日の行動を思いだしていると、がちゃりと音がして
中から自分と卓也が出てきた。
木の影から、そっと覗く。
(すげ...。)
そこには、俺が居た。
家を出て歩いて行く二人を見送ってから、これからどうしようか考える。
もし、20日の出来事が本当なら、このままいけばおそらく俺は死ぬ。
もしかして、そうならない為に俺は昨日に戻されたのか?
いや、でも現実的にそんな事があるわけがない。
___生きろ。
目の前で死んだ兄貴の言葉を思いだす。
再び涙腺が緩んだ。
ふと視線を下に落とした時だった。
とん、と背中に温かい感触が走る。
あの時と似ている、俺が意識を失う前に感じた暖かい感触。
ぎゅう、と抱きしめられてハッとして振り向いた。
「だ、誰だよ!」
振り向けば、そこには青年が立っていた。
青年はフッ、と笑うと俺から離れてわしゃわしゃと頭を撫でてくる。
「誰だって聞いてんの!」
「礼儀として、自分から名乗るのが普通だろ?」
「...峯岸、心晴。」
無愛想に答えれば、青年は笑う。
「俺は、...うーんと、K。」
考えるようなしぐさを見せた後、彼は名前を名乗った。
「は?ケイ?」
「あー、うん、そう。慧。」