その日、地球は滅亡した
なんだか腑に落ちない名乗り方だった。
まるで、今名前を考えたような感じがして俺は怪しい青年に警戒する。
「そう警戒するなよ。」
そう言われても、初対面で背後から抱きつかれれば誰だって警戒する。
なんだ、こいつショタコンか?俺、ショタって言う歳じゃないけど。
「...俺に何か用なんですか。」
「ああ。...お前、命賭ける覚悟あるか?」
真剣な目で、俺を見た慧さん。
「は?」
「い、の、ち。賭けれる?」
もう一度、命を強調して言われたけど俺が聞きたいのはそんな事じゃない。
「ちゃんと、説明してほしいんですけど。俺、ただでさえ今パニックなんで。」
「ああ、知ってる。」
お前、一日前に来たんだもんな。とあっさり言う慧さんの服を反射的に掴んでしまった。
今、なんて言った?知ってる?
慧さんは、何かを知ってる。
ドクドクと心臓が煩くなるのを無視して、俺は問いかけた。
「なんで、知ってっ...、俺、ぜんぶわからなくて、
教えて、欲しい。アレは夢なのか?」
上手く言葉にならなかったけど、慧さんには伝わったらしい。
慧さんはふぅ、と息を吐いた後困ったような表情をした。
「お前が夢だと思ってる事は、全部現実。
2012年8月20日に、地球は滅亡したんだ。」
「嘘、だろ。」
「嘘じゃない。アフリカに無数の小惑星が落ちたんだ。
その振動で地球は太陽から数十メートル遠のいた。遠のいた地球は、
急激に気温が下がり、異常気象が起きて雪が降ったんだ。」
淡々と述べる言葉は、信じられない。
俺は目を見開く事しかできなかった。